高校卒業、そして実家を離れる日に降っていた雪は今でも忘れられないほど綺麗な雪でした
「雪」と言えば連想されるものってなんでしょうか。
スキーやスノボかな?それとも通勤通学の心配の方が多いでしょうか。
住んでいる場所によって「雪」は違ってみえるでしょうね。
先日、横浜市でも雪が降りましたが屋根を真っ白に染めた住宅街の景色は、何年たっても美しく見えます。しかし秋田県の妻の実家では「もううんざりだ。雪かきで身体がもたない」と電話で話しました。屋根が白くなる程度の横浜市と街中でも1メートル積もる横手市では見方も変わりますよね。
私は雪が大好きです。
私の実家も東北ほどではありませんが雪が毎年積もっていました。ここ数年は暖冬もあり少なくなりましたが、冬場はスタッドレスが無いと車は走れないぐらいは降っています。
子供の頃から雪を見て育った私は雪が大好きでした。冬になれば、スキーを担いで裏山で一日中滑ったりしていましたね。もちろんスキー場ではありません。ただのはげ山です。
田舎ですから、子供がスキーをしても地主さんに叱られたなんてことはありません。
高校卒業式の前日の雪を見ていたら
その日はとても強い寒波で吹雪になっていました。卒業前のお休みはみんな暇だった事もあり友達数名と近くの海に行く予定でした。しかし吹雪です。どうしようかと友人宅に集まりワイワイと「卒業しても仲良くしような」とか「次はいつ集まれる」などと数日後にはもう今までのように会えなくなる事が少しづつ感じ始めていました。みんな小学校や中学校から一緒にいた仲間達でした。半分は「もう会えないかもしれない。そんなのは嫌だ」そんな風に思っていたような気がします。
友人の一人が「雪って灰色だったんだなぁ」
窓から外を見ていた一人が言いました。みんな雪は白いものと思っていますが、下から落ちてくる雪を見上げると影になって灰色に見えます。周りが真っ白だからなおさらそう見えます。子供のころから見ていた雪がそう見えるのは知っていましたが、改めてよく見ると本当に灰色なんだなぁ。とみんなで外を見ていました。その時の雪を見ていた全員が、この街を離れる事と、みんなで見た最後雪を重ねていたんだと思います。
音が消えたような感じのする大きなボタン雪がゆっくりと落ちていました。
実家を離れる前日
明日には東京に行くと言う前日も雪でした。そんな時、こたつで寝転びならが窓の外を見ていたら、また大きなボタン雪が降ってきました。
父や母は「積もらないといいね。明日電車が止まったらたいへんだ」などと言っていました。
「イルカのなごり雪みたいだ」なんて母は言っていましたが、田舎から東京に行くのと、東京を離れて恋人同士が別れるのはちょっと違うだろうなんて思いながらも、心の中で歌っていました。
窓から外見た時、私が生まれた時に植えた木にたくさんの雪が積もっていました。その木の周りをゆっくりと落ちてくる雪をじっと見ていました。
私はその時「この景色をずっとみていたいなぁ」と強く思えたことは今でも忘れられません。実家を離れる悲しみからなのか、不安からなのか。
それよりも「なんでこんなに綺麗な景色を18年も見ていてなにも思わなかったんだろう。」
『この景色を見るのは今日が最後なのかな』
そう思うと悲しい気持ちでいっぱいになりました。
友人達と見た雪、そしてこの日の雪。どちらもただゆっくりと空から左右に揺れながら落ちてきます。
私はこたつで寝転がったまま、ずっと雪を見ていました。
あの日の雪景色はどんな綺麗な観光地や庭園にもかなわない素晴らしい私だけの思い出の景色です。たぶん一生忘れられないでしょう。
その後も雪と聞くと心が騒ぎます。
東京の大学から仕事ともう長くなり、田舎の雪景色の見れる冬場は帰っていません。車だと危ないからと言われ、春以降に行くようになりました。
東京でも神奈川でも雪はたまに降りますが、少しでも積もれば私は楽しい気分になります。今でも雪が降ってくるのを見上げて雪がゆっくりと落ちてくるのを見たいと思っているのですが、なかなかそんな雪は降ってくれません。ちょっとベタついた雪が多いですね。それでもたまにあの日と同じようなボタン雪を見ることができる日もありました。
そんな時はいつもあの日を思い出します。
今週のお題「雪」